2021-11-18 信念と町とクリスマスツリー

時計の音がする。ゆっくり流れるふりをする時間に、正しい流れを印刷するような、そんなリズムが心地いい。機械的なその音は不安定な心を安心させて、世界に平等を満たしていく。今日は忙しかった。早起きをして、顔を洗った。マッチの箱のヤスリみたいな、いろんな出来事のそういう側面に消耗していく。石を磨くと光るのは皮肉で、その光には誰が名前をつけたのだろう。

僕らは全部を忘れてしまうから、風のような歌をうたう。誰かに伝える必要はなくて、牧場の羊みたいな信念をもつ。自分の言葉で理解をする。多分そういう種類の思いは必要で、だから石は磨くと光るんだろうな。磨り減ってしまった本当も、集めて大事にしたいと思う。思うことが大切な気がする。僕はいつも推測ばかりで、だけどだからこそ推測をする。分からないから考える。いつもみたいな風が吹いて、深呼吸する。

僕はしっかり前を向く。信念を持って生きていく。7:3の3を歩いて、町のなかで息をする。今日も無事に予定を終えた。空には穴が空いていて、それを埋めるみたいな月があった。前を向こうね。前を向く。12月の気配は潜んで、遠くの踏切の音に宿る。小さなところから冷たくなって、冬眠みたいに静かに渇く。帰り道、駅にクリスマスツリーが飾ってあった。一番上のお星さまが、眩しくなくて寂しかった。似合っていないイルミネーションと、格好だけのプレゼント。群がるスマホのフラッシュが星で、そういう非現実さが必要だった。

明日も予定がたくさんあるから、ゆっくり暖かいお風呂に入る。湯船に浸かりたい。お風呂上がりの窓を開けたら、鉛筆を削って予定を立てる。お水を飲んで電気を消したら、そしたらお布団で夜を向かえる。目を瞑ったら化石になって、誰にも発掘されたくない。ゆっくりやっていこうね。