2021-11-22 ただ雨が降り続ける

雨のなかを、水たまりを避けて歩く。暗い道で街灯を避けて歩く。何が怖いかも分からないから、なるべく曇に隠れていたい。今日は傘をさして歩いた。雨の音が居心地悪くて、遠くの建物をただ眺める。星も月もみえなくて、ただ町に雨が降っている。全部の言葉にただがつくみたいな、そんな雰囲気の雨だった。今日も地球はただ回って、僕たちはただ前を向く。心情描写のふりした雨が、悪意みたい靴を濡らす。

パンダの標識の模様が、平凡な日々の柄みたいだった。パンダとしてやっていこうかな。でも竹だけ食べてるわけにいかなくて、だから少しだけ疲れてしまう。傘を持つ手が冷たくなった。雨宿りをして日記を描く。僕の言葉が届くといいけど、雨の音でかき消される。きみの声が響くといいけど、雨の音とはどう見分ける。世界は寡黙に機能して、ただ雨が降り続ける。

こんがらがった生活は、マフラーみたいだと思った。暖かくても無防備で、いつか首も絞まるのだろう。いずれどこかがほつれたら、なかったことになるのだろか。そろそろマフラーの季節だ。考えごとして傘をさして、車に水をかけられた。想像上のマフラーは、本当によく水を吸うから、ちょっとの量で沈没する。溺れてしまいそうになったから、なんとかしようと少し走る。魚になったみたいだった。パンダじゃなくてイシダイなのかも。

僕は絶対に負けたくなくて、だからしっかり前を向く。今日もしっかり息をして、明日もしっかり息をする。無事に帰宅できました。ただ眺めてた遠くの建物が生活すべての暗喩みたいで、明日を思うと寂しかった。雨は別に止まなくていいけど、なるべく優しく降ってほしい。今日もゆっくりお風呂に入る。心地のいい雨音で眠って、目が覚めたとき、世界は沈んで平等になる。そんなことを思いながら、明日の予定を確認する。お水を飲んで、目をつむる。外ではただ雨が降り続ける。